出会い頭に花瓶でぶん殴りかかられ。「オレに勝つのは百年早い」と宣言したら「長生きなんですね」と素で返され。 何処までも天然なお嬢様だな、とは思っていた。 思ってはいた。が。 しかし。 「ユーリさんは、怪力なんですね!」 まさか、怪力呼ばわりされることになろうとは。誰が想像出来たっていうんだ。 腕力に目を瞠れ 何で、こんな事になったんだっけか。 目の前できらきらと瞳を輝かせて期待の目で見上げてくる、恐らく推定貴族のお嬢様天然箱庭育ちだろう少女とは対照的に、ユーリは途方に暮れた様な遠い目をして天井を仰いだ。 下町で盗まれた水道魔導器を取り返すため、無断でモルディオの屋敷らしい場所に忍び込み。それを咎められて牢にぶち込まれ。それでも下町の様子を見るために、朝までには戻ってくると決めて抜け出したそばから訳ありのお嬢さんを助けるハメになり。 そうしたら、あれよあれよという間に、フレンを狙う暗殺者にフレンと間違われて戦闘になるわ、フレンじゃないと主張しても聞いてはもらえないわ、脱走は見つかって大捜索になるわで既に散々な道のりではあったが。 まさか、城の地下通路への道を発見するために動かした石像のおかげで、こんなに呆気に取られる事になるとは誰が夢にまで思っただろう。決して、誰も想到は叶わなかった。はず、だ。 「凄いです!ユーリさんは、こーんな大きな石像を片手だけで動かせるんですね!」 いや、確かに動かしたけどな。身長の軽く二倍はある女神像をな。武醒魔導器の力借りてな。 「私、初めて見ました。こんなに大変力持ちな方は。私には、どんなに頑張っても無理ですし」 オレも普通に動かしたら無理だけどな。 「一般人では到底成しえない底力を発揮し、その手でとん、と軽く触れるだけで地平線まで吹き飛ばせる人を、俗に怪力と呼ぶと本に書いてありました」 そりゃ、ちょっと語弊があると思うぞ。 「しかも、その人は大地に触れれば地響きを世界中に轟かせ、風をも切り裂くと」 何処のマジシャンだ、そいつは。 「どんなに分厚く、岩よりも硬い鉱石でも軽く掴むだけで握り潰したりとか・・・・・・」 それ、誰の手も握れなくなんだろ、おい。 いちいち心の中でツッコミを入れるも、次々と沸いてくる理路整然としている様で全くしていないうんちくを述べられ。ユーリは、段々と面倒になり。 にょきりと、悪戯心を芽生えさせた。 そう、それもこれもこのお嬢様にはフレンが関与している。つまり、一蓮托生。自業自得。毒を食らわば皿まで、というやつだ。 フレンならきっと何とかしてくれるだろうし。それに多分、世間知らずのお嬢様とは言え、いくら何でもこんなぶっ飛んだ情報まで盲信しないだろうと。ユーリは軽い気持ちで、肩を竦めて見せた。ほんの少々の冗談を飛ばすために。 「あー、そうそう。オレだけじゃなくて、フレンもこれ位の石像なら片手で引っ張り上げたり出来るぜ?」 「え!?」 ぐりん、と振り向く彼女に気を良くし。ユーリは「もちろん」ともっともらしく肯定する。 「それだけじゃない。オレ達二人が揃えば、この石像くらい軽く持ち上げたりも出来たりしてな」 「ほ、本当ですか!?」 「ああ。もしかしたら、この城全体も二人でなら少しくらい動かせたりも可能かもしれないぜ」 やったことねえけどな、と心の中でだけ付け加えて。「ま、冗談だ」と言おうとした矢先。 「す、凄いです!は、早くフレンに会いに行きましょう!」 マジかよ。 完全に丸ごと鵜呑みにされ、ユーリが逆に目を剥くが。そんな彼の仰天な反応にエステルは露ほども気付くはずはなく。 「フレンとユーリさんで、この城を・・・・・・そうしたら、お城ごと旅が出来るかもしれないんですよね?」 無茶言うな。 「そんなお話、初めて聞きました。フレンは何も話してくれませんでしたから」 いや、そうだろうな。無理だしな。 「私、フレンに会いたいです。危険も伝えに行きたいですし・・・・・・何より、その光景をこの瞳に焼き付けたいです」 旅の趣旨があっさり変わったな。 ずずいと、両手を合わせて歩み寄り。俄然、先程より闘志を燃やし始めるエステルに。ユーリは今更「いや、全部冗談のつもりなんだがな」と訂正を入れるタイミングを完全に逸し。 何より。純粋な期待と尊敬を注がれて。その綺麗な願いを傷付ける事にも良心が痛み。 「そうと決まればユーリさん。早速地下に下りましょう!」 「・・・・・・そうすっか。また牢屋に連れ戻されたらたまったもんじゃないしな」 るんるん気分で慎重に階段を下っていく彼女の背中を見つめ。ユーリは、ぽつりと一言。 わりいな、フレン。この天然お嬢様の説得、後はお前に任せた。 タイトルは、自分がプレイしていた時に本気で思ったこと。エステルに代弁させました。フレン大変。 もしかしたら続く、かもしれないです。 【2008/11/21】 |
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