その時、確かに。 自分の心は君に揺らいだ。 君の手 「お前、死の匂いがするな」 唐突でいて物騒で不吉な発言をアッシュにされたのは、ガレット森林区にてアイスリザードをそろそろ五十体ほど狩り終えた頃のことだった。 普通の者なら「何言ってやがるてめえ」と血気盛んに殴り込みをするか、「は?何言ってんのこいつ」と可哀相なものを見る目つきをするか、「え。何それ、どういうこと?」と大いに怯えるかの大まかに割って三択くらいな気がするのだが。あいにくレンという人種はそのどれにも当て嵌まらなかった。 それは恐らく、ディセンダーであるとかそういう条件を抜きにしても、レンという人間が、何でも物事を大らかに受け止める気質であったからだろう。 だから。 「ふーん、そうなんだ?」 「否定もしないか」 「だって、アッシュが言ったんじゃないか。君はむやみやたらに無責任な発言をする人じゃないと思っているけど」 違う?とにっこり微笑まれて、アッシュは「ふん」と鼻を鳴らして剣を下ろす。隣に散った屍を一瞥して、次いでもう一度レンに視線を戻した。 不穏一色に祭り上げられたレンはというと、特に気分を害したわけでもなく。ただにこにこと笑顔を浮かべるだけ。何が楽しいのかと時折頬をつねりたくなる衝動に駆られるが、それは「痛いんだけど」と丁寧に、しかし、はっきりとつねり返してくるだろう結果になるのをアッシュはこれまでの経験から嫌というほどに理解していた。意味が無い。 なので、続きを待っているのだろう――十中八九相違ない確信がアッシュにはある――レンのため・・・・・・というわけでもないが、抱いた感想をそのまま口にすることにした。 「いつ死んでも良いって顔をしているな」 「そうなんだ」 「だが、刹那的ってわけでもない。別に今すぐに死のうって雰囲気でもない」 「まあ、誰でも何か無い限り死にたいとは思わないよな」 「・・・・・・だが。いつ死んでも良いという、覚悟は決めている」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 相槌が、ぴたりと止んだのをキッカケに、アッシュは不機嫌そうに眉を顰めた。 そう。彼は、嘘を吐かない。吐く事を考えない。黙るという選択は、この場合肯定を指す。 それでいて、いつだって澄み切った瞳をこの世に晒している。春風みたいに涼やかな空気を纏っている時もあれば、突然冬の早朝を連想させる鋭利さを潜めている時もある。極端なまでに落差が激しい。 なのに。それでいて、器はいつでも広くて大きい。訳が分からない。 予測が付きにくい。得体が知れない。人当たりは良くて、煙に巻くでもないのに、何を考えているか推測も出来ない。 世界樹の落とし子、なんて普段は意識しないのに。時々、強烈なまでにその現実に立ち返る。その機会を、突き付けてくる。ひどく無邪気に、無意識に。 だから。 “ディセンダーはまた世界樹へ―――” 恐らく、誰もが御伽噺としか認識していなかったあの物語の結末を―――。 思い、出さない様に。 「・・・・・・まあ、俺はお前がどうなろうと知ったことではないがな」 ふいっと背を向けるアッシュに、レンは不思議そうに首を傾げる。ただその背中から黒いオーラというか、煙みたいなのが立ち昇っている気がしたので、不機嫌最高潮だというのだけは理解出来た。 レンは脳を総動員して原因を追究し、追究し、追究し―――。 そして、自分と照らし合わせて導き出した答えは。 「・・・・・・お腹すいたのかな。そろそろパニールがお菓子作っている時間帯だし、俺もお腹すいたな。あ、そうじゃなくてもしかして寒いのか?アッシュ、俺のコート貸す?さすがに二時間ぶっ通しでここにいるのは寒いよな。ごめん、気付かなくて」 「・・・・・・お前のその、最っ高に機転の利かない鈍さに俺は腹が立って仕方が無い」 湯気に酷似した黒煙が更に強まったのを目の当たりにして。レンは、「あれ?」と笑顔で首を傾げるのだった。 けれど。 その時は大して気にも留めなかった彼の一言は。何故かレンの心に小さな棘となって刺さり、抜けないままだった。 アッシュとの二人旅を終えて、午後のアフタヌーンティをたっぷり満喫した後。 ざ・・・・・・と波打つ蒼い大海の鼓動を耳にしながら、レンは一人甲板の縁に寄りかかっていた。 今日は、空から降り注ぐ陽光も穏やかで。のびのびと泳ぐ蒼天に肌を撫でるそよ風が気持ち良い。心も洗われるし、日向ぼっこには最適だとレンは感慨を抱く。 ちらりと視線を海面に走らせれば、優しい日差しを反射して一面に煌く様が満天の星空を思わせて。凛とした響きを鳴らしながらも穏やかにそよぐ様は、ひどく幻想的に映えて美妙な風情を匂わせる。実に最高の日向ぼっこ日和だ。機を逃すわけが無い。 ―――このまま、寝てしまおうか。 のびやかなウミネコの鳴き声を音楽に、レンがうとうとと眠りの世界へと旅立とうとすると。 「レン!」 明るい声が自分の背中を叩いてくるのに合わせを、レンは何処かで歓喜が湧き起こるのを感じる。 こんな風に名前を呼ばれるだけで、少しだけとはいえ浮き立つなんて。彼女は、自分の心を動かす天才だと本気で感心した。 「カノンノ」 「レン、日向ぼっこ?」 「うん、そんなところ。気持ちいいよ。君も一緒にする?」 「・・・・・・うん!」 ぱっと桜が一気に満開になった様な笑みを向けられて、レンは反射的に目を細めた。 とても眩しいと、思う。彼女はいつも自分の感情に素直で、それを表に出す事を躊躇わない。 いつだったか、それをありのまま彼女に告げたら「レンの方が眩しいよ」と返された事があった。何処をどう解釈したら自分が眩しくなるのか判別不能だったが、特に反論もせずに賛辞を受け取った。あの時、理由も一緒に聞いていれば良かったと少し後悔したのは内緒だ。 「気持ちいいねー」と、風に身を委ねて海を望むカノンノを、微笑ましく思う。いつでも一生懸命で、精一杯「生きること」を満喫している。 それが、好ましくて。嬉しくて。 だから。 “死の匂いがするな” ふっと、アッシュに言われた評価が脳裏を過ぎったのは。謎でも何でもない。 生を謳歌し、今を懸命に生きるカノンノ。 死を覚悟し、今を逃すまいとやりたい事を遂げるだけの自分。 自分には、彼女が眩しそうに見えるけど。 彼女には、自分はどんな風に映っているのだろう。 「・・・・・・カノンノ」 「うん?なに?」 屈託無く振り向いてくるカノンノに、レンはほんの片隅で罪悪感を覚えながらも思い立った言葉を口にする。 「あのさ、俺って死にそうに見える?」 「・・・・・・え?」 突拍子もない質問だとレン自身も思った。案の定目を丸くする――心なしか青褪めても見える――彼女に補足をするため、森林区での出来事をかいつまんで説明する。 「アッシュに言われたんだよね。今すぐに死ぬって感じじゃないけど。でも、俺からは死の匂いがするんだって」 「・・・・・・・・・・・・、・・・・・・」 「俺は特に疑問に思わなかったんだけど。普通、言われたらビックリするんだろうなって後からよく考えてみたんだ。それでもって、普段から死の匂いがするって、ちょっと変かなって」 だって、別に他の仲間達からそんな悲愴な匂いを嗅ぎ取った事は無い。みんな、何かに必死になって走り続けて、精一杯輝いていて。 死、なんてものとは、全く無縁で。 だから。 「死の匂い」とやらを放っている自分は、一体どんな風に、映っているのか。 少しだけ。――本当に少しだけ、気になった。 「・・・・・・俺って、そんなに儚いかな?俺としては大いに人生楽しんでいるつもりなんだけど」 ね、と。冗談っぽく締め括るも、レンは早速「失敗したかも」と反省し始める羽目に陥った。カノンノの表情がみるみると曇って、沈んでいくのが手に取るように分かったから。彼女を悲しませるのは本意ではなかったのに。 ―――これって、例え疑問として認識したとしても話題にするのは禁忌だったのかな。 予想以上に重い雰囲気が取り巻き始めた周囲に、レンが困った様に「今のなし」と撤回しようとすると。 「・・・・・・うん。儚く見える時、ある」 「―――――――――――――」 レンが口を開くのを遮って、カノンノはきっぱりと断言する。 その言い方が少々怒った風に響いて。彼女の何かに耐える様な、堪える様な表情に、レンは心臓を鷲掴みにされる思いを味わった。くるくるとよく変遷する表情が、今は氷河に閉じ込められたみたいに凍り付いて。何故か、先程までぽかぽかと優しい温もりで包まれていた心が、一緒に真っ青に冷え込んでいく。 「・・・・・・だから。時々、ふらっといなくなっちゃうんじゃないかって。思う時、あるよ」 「―――――――――、・・・・・・」 “マナを巡る争いを終わりに導き、ディセンダーはまた世界樹へ帰って行きました” 不意に、物語の最後の締め括りがレンの脳裏を掠めていった。流れていく文字の一つ一つに、寒くもないのに身震いする。 分からない。何故、彼女はそんなことを言い出したのか。それとも、ずっと以前から抱えていた不安だったのだろうか。全然皆目見当も付かない。 確かに、意見を求めたのは自分。でも、それは単純に白黒を付けたかっただけだった。どんな風に見えているのかは気にはなったけど、まさかここまで明瞭に返答されるなんて思いも寄らなかった。 自分は、確かにディセンダーで。その内、世界樹に帰る身なのだろう。 世界樹に生み出された瞬間なんて、全く思い出せないけれど。セルシウスにディセンダーだと断言され、どうやら自分と因縁深いらしいクラトスにも同じ様に肯定され、不審に先立って納得をしてしまった。いや、不審さえ一点も滲み出ては来なかった。 仲間の中でも、全くディセンダーだと信じない人もいれば、ディセンダーだと認めてその通りに接してくる人もいる。大半はそういう肩書きを忘れて、色眼鏡で見ずに同じ「人」として付き合ってくれているが。 それでも、ふとした瞬間に。ディセンダーという呼称は付き纏う。 自分が、マナで構成されているのだと、知る瞬間が、ある。マナが減少するに連れて、体調が思わしくなくなっていくのが最たる証拠。 だから、自分はディセンダーであるという意識が常に根底にある。人生を謳歌して、自分の信じる道を進んでいるけれど。自身は特別な存在だとかそういうことを考えずに、ディセンダーはディセンダーだと認識していた。 それが自然の摂理。当然の帰結。当然を当然と考えることさえ忘れるほどに、呼吸をするみたいに当たり前の理。 なのに。 “レンは、レンだよ。ディセンダーであってもそうでなくても” ディセンダーだと判明した時のカノンノの、真っ直ぐな言葉。 衝撃的だった。まさか、ディセンダーであるなしに関わらず、「レンはレン」だと。自分自身をありのままに見てくれる人が、いるなんて。考えさえしなかった。 ―――いや、違う。 考えようとさえしなかった。思い付きさえしなかったのだ。 ディセンダーである前に、自分は「レン」という一個人であるということを。綺麗さっぱりに除去していた。 役目を果たして、自分の役割を終えて。 そうしたら、世界樹に帰る。 先のことは全く見通してはいなかったけれど、多分聞かれたらそう答えていた。表明しなくても、それを当然の帰結として片付けていただろう。 未練も後悔も無い。例え、彼らとの別離が惜しいと、淋しいという一抹の情は貼り付いても。ディセンダーは世界樹と共にあるのだと。それが自然の形態なのだと、疑いもしなかった。 そう。 以前までの、自分ならば。疑問さえ持たなかった。 どうして気付いてしまったのだろう。それ以外の選択肢もあるのだということを。彼らと、――彼女と共に生きる未来も、可能性としてはあるのかもしれないということを。 最初は小さな棘でしかなかった。ちくりと、小さく、普段なら到底気付かない程度の痛覚しか覚えない威力だったのに。 日に日に、膨れ上がっていく棘。棘の先は鋭利さを増して、次第に自分を苛む度合いが強くなっていった。 世界樹に帰ってしまったら。もう二度と、彼女の傍にはいられない。見守ることは、出来ても。直接に、こうして、間近で見る事は永遠に叶えられなくなる。 そう考えたら、胸が締め付けられて。息が詰まって、視界は閉塞して、激しく世界を揺さぶった。立って、いられなくなるほどに。 時々。依頼をこなすためにダンジョンに潜る時。何か奇跡でも起こって世界が安定を取り戻したなら。 自分は、どうするのだろうと思い巡らせる事が、ある。 その時、自分はどの道を採択するのか。 世界樹に帰るのか。それとも、アドリビドムに、彼女の元に、戻るのか。 ―――もし、このまま世界樹に帰還したら。別れが辛いからと、言い訳して何も告げずに帰ったら。 挨拶もなしに消えた自分を、彼女は怒るだろうか。悲しむだろうか。惜しんでくれるだろうか。 泣いて、くれるだろうか。 少し前の自分なら、思い描きさえしなかった。自分がいなくなることで、悲しんで、惜しんで欲しいなんて。 そんな、醜い願いを抱くなんて。ディセンダーとしてはあるまじきこと。 ――なのだと、思う。だって自分は、世界を見守り、支える、世界樹の子供なのだから。 なのに。 自分は、正反対の思考を併せ持っている。 毎回、出かける度に一抹の不思議な祈りに駆られて。 船に帰って、彼女に「おかえりなさい」と笑顔で迎えられるたびに。どれほど安堵を覚え、触れたかったか。 今回だって、アッシュと共に外出して。そこから帰って来た時、真っ先に甲板で「おかえりなさい」と出迎えられて、どれほど胸が打ち震えたか。「ただいま」と紡ぐのに、一糸も乱れない声音を保つのにどれだけの精神力を総動員させたか。 きっと、彼女には分からない。 分からなくて、良い。こんな身勝手な願い事など。知らない方が、彼女のためでもあり、幸せでもある。 「・・・・・・カノンノ?」 俯いて黙りこくってしまった彼女が心配になって声をかけてみる。 けれど、反応は一縷ほども現れてはくれなくて。ただ、顔は見えないのに泣きそうに空気が揺らいで見えたから。 どうすれば、良いのだろう。こんな時、何と声をかけたら良いのだろう。 嘘でも良いから、安心させてあげるべきなのか。彼女の望む通りの解答を上っ面だけで並べれば良いのか。 でも。 そんな裏切り、絶対に働きたくない。 だから。 今、告げられる、最大級の誠意を。 「・・・・・・俺、消えないよ」 どうか、届いて。届かないで。 相反する心がせめぎ合って、一つの結論を導き出す。 少し、声が擦れてしまった気がする。ちょうど波が一際大きくさざめいたから、彼女の耳にまで届かなかったかもしれない。 でも、彼女は顔を上げてきた。正面から、見据えてきた。自分を、見てくれた。 エメラルド色の双眸は、一点の曇りもなく暖かな色を宿している。清楚であるのに強く磨き抜かれた意志を秘めた輝きは、いつだって自分の心を清冽に貫いてくる。 本当に、綺麗な瞳だと思う。何度だって貫かれても良いと馬鹿な想いを抱いてしまうほどに。どんな宝石だって、彼女の瞳の前では霞む。 ―――何で、こんな訳の分からない講釈垂れているんだろうな。 人知れず微苦笑を零して、レンは続きを詠う。一度言葉にしてしまったからには、自分の正直な気持ちを口にしてしまいたかった。 「俺は、消えない。だって、消える理由がないから」 「・・・・・・レン」 「なんなら、握手しようか?」 「え?」 「俺がここにいるって、一番手っ取り早く分かるだろう?」 ほら、と手を差し出したのはほとんど条件反射の様なものだった。握手というのも、どうしてそんな行動に移したのか理解が追いつかない。 でも、握手を、したかった。他ならぬ、彼女と。 自分は、生きていると。ここに、いるのだと。実感したかった。 何かを恐れているのか、躊躇っているのか。恐る恐るといった様子で伸ばしてくるカノンノ手を、じれったく思って。レンはさっと自分から掴んだ。強引だと思いながらも、後悔は全くしていなくて。 どうして、彼女にはペースを狂わされるのだろう。 どうして、彼女をこんなにも意識しているのだろう。 どうして、こんなに彼女を目で追っているのだろう。 どうして、彼女に「生」を結び付けるのだろう。 分からない。何も。全て、一寸先まで真っ白で。 何故。 自分は―――。 「・・・・・・あったかいね」 「――――――――――――」 告げられた言葉に、レンは酷く困惑した。狼狽していると悟られたくなくて、努めて握手をしている右手と顔に神経を集中させた。 あったかい。そんな事を言われたのは、初めてだ。 いや。 初めてな、気がした。 「・・・・・・そう?」 「うん。レンの手って、あったかい」 ふわりと、微笑んだ彼女に、レンは目を奪われる。春に抱かれたみたいに幸せが吹き抜けた。 あったかいと、彼女は言ってくれた。死の匂いがする、自分のことを。 手の平越しに、彼女を感じて。とくりとくりと、小さく、けれど優しく伝わる鼓動の光が、どうしようもなく自分を落ち着かせた。 彼女の方こそ、あったかいという形容詞が似合う。こんなにも自分に暖かい気持ちを、闇を切り裂く輝きを与えてくれるのは、彼女の方なのだから。 それだから、なのか。 どうしてだろう。 俯かれているのが、とても淋しい。 「・・・・・・カノンノ」 声は、震えていないだろうかと。レンは変な心配をしながら名前を呼んでみる。その事自体に意味は無かった。 意味は無かったからこそ。その無意味な行動を取る自分に、レンは違和感を覚えた。 「何?」と見上げてくるカノンノに。その彼女の笑顔に。笑っているのに、何故か泣いているみたいだと感じたことに。 全てに、疑問を抱いて。 「・・・・・・何でもない。呼んでみたかっただけ」 にっこりと、本心を述べて。レンは、空いた手を背後に回す。 そうしなければ、手を伸ばしてしまいそうだった。そして、それを何故か「駄目だ」と差し止める自分がいた。 彼女の手は、暖かくて。優しくて。力強い。 こんなに細いのに。白いのに。自分よりも小さいのに。力を加減しなければ、きっと彼女は痛みを訴える。それほどまでに、華奢なのに。 けれど。 とても、頼もしくて強いと。包み込まれる様な感覚に、レンは今度こそ本当に当惑した。心の中でだけ首を横に振る。そうでもしないと、望んでしまいそうだった。 駄目だ。約束出来ない。保証が叶わない。分からない。だって、何も覚えていない。 もし、昔自分がディセンダーとして生まれたことがあったとして。その後、物語通りに帰ってしまったとして。その理由を、自分は知らない。 物語の結末は、本当かもしれない。事実ではないかもしれない。 知らないから、約束出来ない。保証が叶わない。未来は、分からない。 でも。それでも。 俺は、いなくならないよ。 そう、叫びたかっただなんて。この気持ちが、身体を揺さぶるこの衝動が、何から芽生えたものかなんて。 まだ、知らなくて良い。知らないままの方が、良い。 そう、呪文の様に繰り返し唱えて、言い聞かせて。追い討ちをかける様にさざめく波の音を背に、レンはカノンノの手を離せないままでいた。 その時、確かに。 自分の心は君に揺らいだ。 基本、ハッピーエンド思考な自分。だから、この二人の結末もハッピーハッピーです。 レンが自分の気持ちを自覚する大前提な話のつもり。です。 【2009/3/31】 |
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